ツアーには色々なものがあるが、添乗先のほとんどは「自然を相手にするもの」が多い。
例えば、〇〇の滝、〇〇色の湖、絶景の紅葉、咲き散らかす桜・・・等。けれどそれらは、その日の天候やそもそもの時期によって「見ごろではない」場合も多い。
多いというかこれまでわたしが経験した自然相手の添乗先は8割負けている。
つまり、広告通りの景色を見ることができていない。滝は水量が少なかったし、逆に湖は前日の大雨で濁っていた。紅葉にいたっては、今夏の猛暑の影響でどこにいっても「まだまだ」な状態。11月後半になってきてようやっと紅葉らしくなってきたという段階である。
こういうとき、お客さまに対し、本当に申し訳ない気持ちになってしまう。わたしたち添乗員はまた来週、なんなら明日、明後日同じようなツアーに出かけ、また紅葉を見るチャンスもあるだろうが、今目の前にいるお客さまは今日このときのツアーに賭けてきているわけである。
それなのに、売りのモノが拝めない。本当に申し訳ない。
けれど天候相手なのでお客さまも目立って文句を言ってくることもない。お客さまは「こればっかりは仕方ないよね」などと自分に言い聞かせるように呟いている。
そんな時に添乗員としてどんなフォローが必要なのだろうか。考えてみて実践していることは2つ。
1つ目は「思い描く景色を見られる可能性が低いことを最初に伝える」こと。
つまりお客さまにとっての悪い情報を先出しして伝えるのだ。朝の挨拶の時点で「この夏の猛暑の影響で、紅葉がかなり遅れています。本日〇〇のもみじもまだまだ緑が多いかもしれません」と。そしてさらにひと言加えると笑ってもらえる。「緑でも、もみじはもみじですから」
事前にお客さまにとって良くない情報を伝えておくことはかなり有効なように思える。他にも「渋滞が予想され、お帰りの時間が遅くなるかも」「お天気が下り坂で風も強くなるかも」「お土産を買える場所が少ないかも」など。
適切なタイミングでの正しい情報提供がお客さまの不満を和らげる。プラスの点数はもらえなくてもマイナスにもならない方法だと言えよう。
それからもう2つ目は「他の部分で楽しめたことを共有」すること。
これは主に復路にてお別れの挨拶をするときに「〇〇は見られなかったけど、〇〇のマイナスイオンをたっぷり感じられた」とか「雨だったからこそ幻想的な雰囲気に包まれていた」などと、今日の天気、タイミングだったからこその「良かったところ」をなんとか探して伝えている。
そうするとお客さまも「それもそうか」と今日は今日で良かったかも、と帰っていただけるのだ(という気がしている)
自然相手の添乗こそ添乗員の腕の見せ所なのかな。
わたしの修行はまだまだ続きます。